と、いうわけでございまして、アズチャンの発毛計画スタート!

 このページは、アズチャンがハゲてきた頭を復活させていく過程を記録していく、奇跡の実験場である。

 ハゲ散らかしから栄光のフサフサへ! これであなたもモテモテだ!


 2010年7月1日。

 ふと、髪の毛をフサフサにしたくなり、それを達成するためにはどうすればよいか、ということを調べてみる。すると、以下のようなことが重要だということがわかった。

 規則正しい生活。バランスの良い食事。適度な運動。禁煙。酒量を抑える。

 ふむ。全てを実行していけば「ようこそクソつまらねえ人生」みたいなラインナップ。私の生活を全否定されているかのようでもある。

 そもそも、これらの情報が本当なのかどうか、まずそこが怪しい。本当にこれらが、薄毛や脱毛の原因になっているのだろうか。たしかに私は、全然規則正しくない生活をしていて、偏った食事をとっては、運動もろくにせず、ハイライトを吸っては、酒もそこそこ飲んで、ハゲてきている。しかし、それらが本当に直接的な原因だったのだと、誰がどうして言えよう。これらの掟を全て破ってフサフサな人間を私は知っているし、これらの掟を全てクリアしているにも拘らずハゲ散らかしてしまっている人間も私は知っている。だいたい、これらの情報は、発毛情報を売ることによって商売をしているサイトなどから得たものだし、どうも、ハゲの気持ちを踏みにじって金儲けをしようという、フサフサ貴族どもの悪巧みのような気がしてならない。

 「俺はいい、俺のことなんかはどうだっていい……ただ、ただ、俺以外のハゲ仲間が、ただでさえ脱毛によって心に傷を負っているというのに、この薬利くよとか言われて詐欺られていくのが忍びないんだ……!」

 という気持ち。それでも、複数の場所で同じような情報が重複して見られるのだから、ある程度は信頼の置ける情報なのかもしれない。これは検証するしかないだろう。と私は思ったわけだ。というわけで、アズチャンの発毛計画はそういう趣旨で進められていくことになる。

 全てをいっぺんにやると、どれが効果を表したのかわからなくなるので、1つずつやっていこうかと思う。

 となると、どれができそうか、という問題にまずぶつかってしまうのであるが、規則正しい生活、というのは、だらしない生活をするためにこの世に生を受けた私にとっては、恐るべき困難である。だからこれは後回し。続いて、バランスの良い食事、というのも、独身貴族の私には面倒臭いので後回し。運動、というのも、中日の和田選手とかサッカー選手のルーニーとかロッベンとかがハゲているので、信憑性に欠けるので後回し。酒は元々そんなにたくさん飲まないので、やめたところであまり効果は表れそうにない。というわけで、私は最初の検証として、禁煙を選ぶことにした。この禁煙に対する私の決意がどれくらいのものかというと、「僕は人を殺さない」という決意が1000だったとして、3くらいだ。もしこの禁煙に失敗した場合、次は、規則正しい生活、の検証の方に挑戦するつもりである。

 まず、生えっぷりがわからなくてはならないので、毛根にリフレッシュしてもらうという目的も兼ねて、とりあえずツルツルになってみる。

(ツルツルと言ったらツルツル。ザラザラな所は少しもない)

 と、↑のようになったところで、剃る前の写真もとっておかないと検証もくそもないではないか、ということに気づいたが、時既に遅し、もう剃ってしまった。だけど自分ではなんとなくわかっているからまあいいか、と今は納得している。

 頭髪を剃ったのは、高校生の頃以来だ。あの時と同様、思いっきり剃刀負けしてしまい、頭からいっぱい出血。至る所にブツブツができて、気持ち悪い。

(上からの図。中央左上がさそり座の心臓アンタレス。これが現れると青年オリオンは逃げだしたという)

 私はM字ハゲなので、斜め上からのアングルも必要かと思って撮影。

(無数の出血の痕を繋げると、エチオピアの王妃、カシオペヤが浮かび上がる)

 結局、頭を剃って煙草をやめただけで発毛していく予定である。

 これでフサフサになるはず! 楽しみだなあ!

 とりあえず毛が生えてきたらまた写真に撮って、『発毛の歩み』としてここに記録していきます。


 7月6日の中間報告。

 普通に煙草吸ってます。煙草やめるのって難しいです。マーク・トウェインもそう言っています。

 というわけで、規則正しい生活に方針を変更! 午後2時に寝て午後10時に起きる。これでしばらく頑張るよ!

 これでフサフサになるはず! 楽しみだなあ!


 2013年2月23日。

 さて、このようなページがあったことをすっかり忘れていた私だが、一昨日に携帯電話を新しくしたことによって、不意に、それはもう本当に唐突に、自分が発毛計画を実行中だったことを思いだした。といってもお察しの通り、忘れていただけあって、上記の掟は全て、全くといって守っていない。しかし、あの頃よりも痩せた、という事実がある。たぶん10キロくらい痩せている。ひょっとしたら、痩せるとフサフサになる、ということがあって、図らずもそのことを、私はここで証明できるかもしれない。それに、単に撮りたい、という欲求があった。新しい携帯電話に付いている新しいキャメラで、何かを撮ってみたいだけだったりもした。

 というわけで、早速撮影。更新を思い立った直後の私である。

(2年8ヶ月でこれしか伸びなかったわけではない。週刊文春に異性との交際をすっぱ抜かれたわけでもない)

 まず、髪の毛伸びてきてうざいぜ……と思い、バリカンをあてる。アタッチメントは3ミリ。髭も剃る。

(M字ハゲはチンピラに見えるから困る。本当はもっとかわいい)

 それでは続いて、上からの状態を御覧いただこう。

(上からの図。温暖化が原因か、砂漠化が進んでいる。特に向かって左、私からすると右砂漠が深刻である)

(右にいく前に、左斜め上のお披露目。どうだろうか。前回の写真がツルツルなので、比較できないのが痛い)

 それでは、問題の右斜め上。

 !?

 ぬおっ!

 こ、これは……? モンゴルの騎馬隊が中央アジアから西アジア、終にはヨーロッパ大陸までを侵略していった時の地図か? いいや違う! 俺の頭だ!

(右斜め上3兄弟。上が長男。下が三男。間に挟まれているのが次男。長男は弟想い)

 長男は毛のある部分が海で肌色部分が大陸と捉えれば惑星に見える。次男は目の所が肌色のゴレンジャーにも見える。三男はなんだ、天の川か?

 それにしても……ふう、ヘビーだぜ……まさかこんな事態になっていたとはな。これはフェーズ6だ。感染するし、全世界を恐怖のドン底に落ち込ませるほどの危険性さえ孕んでいる。国は俺を早急に保護すべきだろう。そして毎月20万円くらいの小遣いを与えるべきだろう。


 と、いうわけで、これが今回の報告になるわけだが、おそらくこれがアズフサフサ、最後の更新になるだろうということを、皆さんにここにお伝えしておかなくてはならない。またすぐに忘れちゃうだろうし、なんといっても私は、ハゲの原因を既に突き止めていて、発毛計画などは無駄だということを知ってしまっているから、これを続ける意義を失っているのだ。しかしここで、発毛を渇望する諸君を置いて、独り達観しているのも忍びない。であるから、以下、私が辿り着いた、"人間がハゲに至る真実"を述べていこうと思う。以降はテキストばかりとなるので、興味のない方は戻ることを推奨する。


 論文『禿頭(とくとう)に至る病』

 人間の頭髪が枯れていく現象について、様々な臆測が飛び交っているが、どれも信憑性に欠け、効果が表れたという報告も稀という現実がある。それでも私は原因を究明するべく、数千冊という文献(『大長編ドラえもん』なども含まれる)を読み漁った。その過程でよく出てきた単語で、男性ホルモン、というのがあった。まずはこれから反証していきたい。

 このホルモンが強いとハゲる。と数々の文献は言う。しかし本当にそうだろうか。男性ホルモンが強い人間は攻撃的な性格である、そうだが、となれば、殺人罪や傷害罪で刑務所に服役している囚人たちの多くは、大抵がハゲている、ということになる。しかし実際にはそのようなことはない。罪は等しくフサフサの心も侵している。私は以前、赤羽のイトーヨーカドーで整髪料を万引き(万引きも攻撃的な性格に由来すると仮定する)している青年グループを目撃したことがあるが、彼らは整髪料を万引きするだけあってフサフサだった。そして逆に、私が攻撃的ではない、という事実がある。コンビニにたむろする悪そうな中学生にもびびってしまうし、アメフトを観戦していてもいつもディフェンスの方に注目してしまうくらいだ。攻撃的でハゲている人というと、織田信長くらいしか思いつかない。それだって、本物の織田信長なんて見たことがないし、遺されている絵画などの彼の姿が本物に忠実な描写だったとしても、あれは信長のオシャレなのではないかという疑いがある。従って、男性ホルモン=攻撃的=ハゲという数式は、成り立たないことがわかる。

 男性ホルモンの量は、巨大なタマキンにも示される。しかし私は幾人もの巨大タマキンの所持者を知っているが、全員がフサフサであった。このことからも、男性ホルモン=タマキンの巨大化=ハゲという数式が成り立たないことは、生き証人によって既に立証されていると言える。たとえ巨大でなくとも、女遊びが好きで好きでたまらない、という人間もいて、これもまた男性ホルモンの凶悪さが理由となっているかもしれない。しかし遊び人はやはり、あんまりハゲていない(ハゲている人はそれがコンプレックスで女遊びにも消極的になる、という事例はここでは無視する)。そしてここでも逆に、私自身がハゲる前からそんなに女遊びをするタイプではなかった、という事実が、この反証を決定的なものにしているのだ。因みに、「女の人にハゲはいないではないか! ということはやっぱり、男性ホルモンは関係あるんじゃないのか?」という声が聞こえてきそうであるが、男性ホルモンは男性だけのものではなく、女性の体にもあるものだという事実をきちんと理解していただこう。

 ということで、"男性ホルモンが関係している論者"を、私は完全に論破した。続いて、紫外線説、について。

 私は東南アジアを旅行したことがあるが、東南アジアはアジアの東南に位置するだけあって、陽射しが非常に強い。しかし、これは道往く人を実際にこの目で見てきた私の確実なる記憶による証言となるが、ハゲている人はほとんどいなかった。帽子を被っている人も少なく、皆が皆その頭に強烈な紫外線の直撃を受けていたのだ。にも拘らず、彼らはクログーロのフーサフサだった。繰り返そう、クログーロのフーサフサだったのだ。そして別の場所、例えばヨーロッパに目を向けてみれば、これがハゲの巣窟なのである。霧の都と言われるほどのロンドンに住む人もそうだし、日本よりもずっと北に位置するドイツに住む人々などは、ほとんどがハゲているのだ(男性だけだが、女性についての言及はここではしない)。これはフランスでも同じことが言える。以上のことから、紫外線が頭皮によくない、というのは、本当に信用のならない説であることがわかる。またしても完全なる論破に成功した。

 続いて、不潔説。

 不潔にしていると発毛によくない、という説もよく耳にするが、これも確実に嘘である。これはもうずっと以前に、作家の五木寛之氏が何かのエッセーで書いていたことだが、氏は、乞食にハゲはいない、という伝説的な名言をお吐きになられておられるのでござる。たしかに、乞食の方でハゲている人を見たことがある人は稀だろう。そこで私たちは、彼らはああ見えて意外と清潔なのではないか、ということも疑わなければならないが、それもやはり違うと、私はここではっきりと証言することができる。私は以前、新宿区大久保に住んでいたことがあるのだが、その時の私の住むアパートの近くの公園には、ホームレスの方がたくさん起居しておられた(これは余談であるが、上半身はブルゾンで、下半身はフルティーンで、日本刀で公園の植木をザックザクとするのを日課とされていた方もおられた!)。そしてその人たちの髪の毛は、ほとんど全員がガッサガサのバッサバサのゴッワゴワだった。水道の所でリンスをしている姿などはもちろん見たことがない。彼らはやはり不潔なのだ。そして全く、ハゲていないのだ!

 続いて、ストレス説。

 これはもう簡単である。私はストレスというものをほとんど抱えていない。胃が痛くなったこともないし、肩こりにもなったことがないほどだ。だからこれも関係がないと言い切っていいだろう。

 以上のことから、あらゆる説を完全に論破した私だが、いいかげんにここらで、私の信じるハゲの理屈、"ハゲへの道程"を発表したい。名付けるならば、頭蓋骨説、となる。

 そもそも私が様々な理由に疑問をもったのは、それじゃあなんでハゲない部分があるのか、ということだった。規則正しい生活をしなくてもバランスの良い食事をしなくても適度な運動をしなくても禁煙をしなくても酒量を抑えなくても、或いは、男性ホルモンの量が多かろうが紫外線を受けまくろうが不潔にしていようが、どうしたってハゲない部分があるというのはどういうわけか。無毛症の人はともかくとして、普通のハゲの人は、絶対にハゲない、という領域を確実にもっている。例に出すのが架空の人物で恐縮だが、例えば『サザエさん』に出てくる波平さんという人がいる。あのタイプのハゲ方をしている人は現実世界にも数多くいるが、あの生えている部分は、おそらく死ぬまでハゲないだろう。

 なぜか。なぜそのような領域があるのか。

 私が他の全ての説を信用できなくなったのは、これに気づいた時からだった。そしてこの疑問は、一筋の光明をこの私にもたらしたのである。

 そこで、頭蓋骨説、である。人間の頭蓋骨は、なんと大人になっても微妙に大きくなり続けるという。もちろん個人差はあって、あまり大きくならない人もいるそうだが、大きくなる人は少しずつ少しずつ、死ぬまで大きくなり続けるのだそうだ。この事実を知った時、パズルの最後のピースがはまった感じがした。全ての疑問が、これで解決するではないか。

 まず、頭蓋骨が大きくなるとなぜハゲるのか、という基本的で且つ、最大の問題について。これはもうそのままで、非常に信じられる理屈である。即ち、固い地盤(頭蓋骨)が迫り上がってきて、根(毛根)が張られるべき軟らかい土(頭皮と頭蓋骨の間のお肉の部分)の厚さを充分に確保できなくなり、根(毛根)が充分な力強さを得られなくなる、という理屈である。そしてこの理屈を証明するかのような事実が、ハゲ方、だ。

 この論文の前に記した報告にもある通り、私は泣く子も黙るM字ハゲだが、これは私の頭蓋骨の膨張の仕方による必然なのだ、と考えられはしないだろうか。頭頂部からハゲる人もいるが、そういう人はそういうふうに頭蓋骨が成長したのだ、と考えるのは不自然だろうか。だから頭の形が人それぞれであるようにハゲ方にも個性が出てくるのだ、という思考は非常に素直で、決して無理のある論説だとは私は思わない。波平さんでもしっかりと毛が生えている例の部分の内側にある頭蓋骨が、徐々に徐々に外側に膨らんでいくというのを想像し難いというのも、この説の信憑性を高めている。ハゲていないアナタに訊きたい。仮にアナタの頭蓋骨の内容積が2倍になったとして、はたしてアナタは、ハゲていない自分の未来を想像できるだろうか!

 これが私の唱える頭蓋骨説の、衝撃の真相である。

 だいたい、禿頭のオッサンは頭が良い、というのは、中国の諺などで古来から言われていることだ。頭蓋骨がでかいから脳みそたっぷりで頭が良い。頭蓋骨がでかいからハゲる。これ即ち、頭が良い=頭蓋骨がでかい=ハゲ、の数式が完全に成立しているということであって、ここまでくればもう、疑いようがない。事実、私は自他共に認める大天才だし、髪の毛フサフサの友人たちを思い起こせば、片っ端から悲しいくらいの馬鹿ばかりだった。なんでこんな簡単なことに気がつかなかったのだろう。きっと、フサフサ時代は馬鹿だったから、こんな簡単なことにも気づけなかったのだ。

 ここで、なぜ男性だけがハゲるのか、という疑問が出てくるが、女性は頭蓋骨があんまり膨張しない、と仮定すれば、この疑問も解決するだろう。考えてみれば、女性は馬鹿が多い(おい!)。頭蓋骨が大きくならないから、脳みそが足りていないのだ(おい!)。だから彼女らは昼飯の写真をブログに載せたり、夜飯の写真をブログに載せたり、はたまた、朝飯の写真をブログに載せたりするのだ。馬鹿だからである。なぜ馬鹿なのかというと、頭蓋骨が小さいままだからである。頭蓋骨が小さいままだから、歳をとってもハゲないのだ。たしかに、たまに、この人頭いいなー、と思わせる、明らかに聡明さを発散している女性もいるにはいる。しかし思いだしてみて欲しい。その人はちょっと、ハゲていたはずだ。知性と引替えに、いくらかの頭髪を失っていたはずだ。やはりこの頭蓋骨説、完璧である。

 最後に、禿頭のパラドックス、というのを。

 前提1「髪の毛が1本もない人はハゲである」

 前提2「ハゲの人に髪の毛を1本足しても、所詮はハゲである」

 ここで、前提1に前提2を繰り返し繰り返し適用していくとどうなるだろう。

 いつかはそのハゲ頭には大量の毛があることになるが、前提2の法則からいって、その頭はやはり、依然としてハゲということになる。

 結論「よって、全ての人はハゲである」



 戻りたいのさ、あの頃に。

inserted by FC2 system